「新型コロナワクチンまとめ(医療従事者向け)」の版間の差分
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本ページでは,2021年1月10日時点の情報を基に,上記3ワクチンについてまとめています. | 本ページでは,2021年1月10日時点の情報を基に,上記3ワクチンについてまとめています. | ||
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==「ワクチンの効果 vaccine efficacy」とは,「接種しなかったので感染した人数」から「接種したけど感染した人数」への「割引率」== | ==「ワクチンの効果 vaccine efficacy」とは,「接種しなかったので感染した人数」から「接種したけど感染した人数」への「割引率」== |
2021年1月11日 (月) 17:17時点における版
目次
要点と個人的見解
開発が進む新型コロナワクチン
2020年1月10日に中国当局が新型コロナウイルス発見とその遺伝子配列を公表したその日から(※),この新興病原体に対するワクチン開発競争が始まりました.
- (※)Pfizer-BiONTechのphase 3論文には,本当に1月10日から開発に着手したと書かれてあります.
日本を含む世界中の研究機関や製薬会社,バイオベンチャー企業がしのぎを削って開発を進めている様子は,下記のサイトで随時更新されています.
サイトごとにまとめ方が異なるため,数字はそれぞれ異なります.
輸入契約が結ばれている等の理由で日本に直結し,かつ既に開発国で認可済み(緊急使用承認含む)のワクチンは,下記の3ワクチンです.
開発元 | 開発拠点国 | 開発コード名 |
---|---|---|
|
米国 | BNT162b2 |
|
米国 | mRNA-1273 |
|
英国 | AZD1222 |
本ページでは,2021年1月10日時点の情報を基に,上記3ワクチンについてまとめています.
「ワクチンの効果 vaccine efficacy」とは,「接種しなかったので感染した人数」から「接種したけど感染した人数」への「割引率」
本題に入る前に,ワクチンの「効果」を知っておきましょう.
「このワクチンを接種すると95%の予防効果がある」とは具体的にどういう意味なのか?
ワクチン学では,ワクチンの効果を「vaccine efficacy, VE」と呼びます.
私の知る限り定まった日本語訳はないようです.直訳すれば「ワクチン効果」ですが,あまり見かけない表現ですね.
私は英略称のまま「VE」と呼んでいます.
EBMを学んだ方向けの表現をすればこういうことです.
ワクチンの効果 vaccine efficacy (VE)
=接種群のプラセボ群に対する相対リスク減少(%) |
噛み砕いて言えばこうです.
「ワクチンの効果」とは, 「接種しなかったので感染した人数」から |
新しいワクチンの治験に未感染者20,000人が参加し,10,000人が実薬群,10,000人がプラセボ群に割り付けられたとします.
割付 | 割付人数 |
---|---|
実薬群 | 10,000 |
プラセボ群 | 10,000 |
接種後に一定期間観察したところ,実薬群では5人が感染したのに対し,プラセボ群では100人が感染しました.
割付 | 割付人数 | 感染者数 | 感染率 |
---|---|---|---|
実薬群 | 10,000 | 5 | 5/10,000=0.05% |
プラセボ群 | 10,000 | 100 | 100/10,000=1.00% |
実薬群の感染率 5/10,000=0.05% は,プラセボ群の感染率 100/10,000=1.00% に比べて,95%の減少,つまり「95%割引」です.
割付 | 割付人数 | 感染者数 | 感染率 | 感染率の減少度合い=割引率 |
---|---|---|---|---|
実薬群 | 10,000 | 5 | 5/10,000=0.05% | (1.00 - 0.05)÷1.00 =0.95 (95%) |
プラセボ群 | 10,000 | 100 | 100/10,000=1.00% |
この「95%」が ワクチンの効果 vaccine efficacy, VEです.
ワクチンを接種することで「感染リスクが95%割り引かれる」と言うこともできます.割引率95%の超お値打ち品ということです.
米英で緊急認可済みの3ワクチンのかんたんまとめ
わかっていること
- ファイザーとモデルナのmRNAワクチンでは,2回目接種の7日後以降または14日後以降の時点で,症状が出てから検査・診断されるコロナが,約95%の効果で予防できる.
- アストラゼネカのウイルスベクターワクチンでは,2回目接種の28日後以降の時点で,症状が出てから検査・診断されるコロナが,約70-90%の効果で予防できる.
- ファイザーとモデルナのmRNAワクチンおよびアストラゼネカのウイルスベクターワクチンでは,接種部位の痛み,倦怠感(だるさ),発熱,アナフィラキシーショックなどのどんなワクチンでも起こる副反応はあったが,ワクチンが明らかに原因と考えられる重大な副反応は今のところ報告されていない.
まだわからないこと
- 3ワクチンとも,2回目接種から長期間(3ヶ月,半年,1年,5年など)経った後も効果が続くかどうかわかっていない.
- プラセボ接種された人をさらに長期間観察すれば判明するが,プラセボ接種者に本当のワクチンを打たないままにするのが倫理的に許されるかどうか議論が出る可能性がある.
- プラセボ接種者に早々に本当のワクチンを接種すると,長期間の効果は判定不可能になる.
- ファイザーとモデルナのmRNAワクチンでは,無症状コロナ感染が予防できたかどうか全くわかっていない.
- 3ワクチンとも,ワクチン接種者とプラセボ接種者のそれぞれからクラスターが発生したかどうか,ワクチン接種者からのクラスターが少なかったかどうか,全くわかっていない.
- 悪いシナリオとしては,ワクチン接種で発症は予防できるが他人への感染性は予防できない可能性がある.すなわち集団免疫が獲得できず,接種した個人だけにメリットがあるワクチンという可能性が今のところは否定できない.