「指定感染症とは|感染症法の解説」の版間の差分

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*一類感染症に次いでvirulenceやCFRが高いが、ヒト-ヒト感染は一類感染に劣る
 
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2020年1月31日 (金) 01:31時点における版

令和2年(2020年)1月28日に「新型コロナウイルス感染症を指定感染症として定める等の政令(一一)」が公布され、同2月7日(政令公布の日から起算して10日を経過した日)から施行されることとなりました。

以下に、感染症法の概説と今回の指定感染症の内容、また関連する検疫法と検疫法施行令改正について、解説します。

感染症法とは

感染症法は正式名称を「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(平成10年法律第114号)といいます。

第1条において、感染症法の目的を下記のように明記しています。(※太字はサイト管理者による)

(目的)

第1条 この法律は、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関し必要な措置を定めることにより、感染症の発生を予防し、及びそのまん延の防止を図り、もって公衆衛生の向上及び増進を図ることを目的とする。

措置」という日本語は、辞書によると「事態に応じて必要な手続きをとること。取り計らって始末をつけること。処置。」(デジタル大辞泉)とあります。

法律用語・行政用語としての「措置」は、行政機関(の長)や自治体(の首長)などが、法令上の権限や義務に基づいて行う手続きや処置のことを指します。

したがって感染症法の目的とは、感染症の予防や医療を行うための各種の措置を法律で定めて、必要に応じてそれら措置を実行し、その結果として感染症の発生予防やまん延防止を実現すること、と言えます。

措置を法律で定める 措置を実行して以下を実現する
  • 感染症の予防のための措置
  • 感染症の医療のための措置
  • 感染症の発生の未然予防
  • 発生した感染症のまん延防止

感染症法が定める措置の実施主体

感染症法が定める措置の内容を説明する前に、措置の実施主体(措置を実施する者)について若干の説明が必要です。

感染症法の各条文を読むと、「都道府県知事は」「厚生労働大臣は」「医師は」などの主語で始まっていることがわかります。これらの主語が、その後に書かれてある各種の措置の実施主体(措置を実施する者)です。

こうした法律においては、「知事」「大臣」「医師」などの役職名によって「人」を実施主体とすることが一般的です。例えば、措置を実施するときにその内容を記した文書を交付する場合などに、その文書の交付者として「○○知事」「○○大臣」「医師 ○○」と書かれるわけです。

ただし、現実には、個々の措置を首長や大臣が直接現場に出向いて指示するわけではありません。

措置の実際を考えるのは、各自治体厚生労働省感染症担当部署です。
感染症担当部署の職員が実務を担い、措置の内容を検討し、「この通りに措置を行うべきと考えます」と首長や大臣に上申し、それを首長名や大臣名で発するという仕組みです。

したがって、感染症法で実施主体が「都道府県知事」「厚生労働大臣」と書かれてある場合、実際には自治体等の感染症担当部署が実務を担っているとお考えください。

  • 措置の実施主体は、知事や大臣など役職者
  • 措置の実務を担うのは、自治体等の感染症担当部署

「保健所設置市(区)長」は都道府県知事とほぼ同等の措置を担う

措置の実施主体が「都道府県知事」と書かれてある場合、実務を担うのは都道府県庁の感染症担当部署です。

ただし、一定以上の規模の市及び東京都の23の特別区は、都道府県から独立して独自に保健行政を遂行する権限を与えられています。

それらの市区は、保健所も独自に設置しています。そのため、「保健所設置市(区)」と通称されています。

保健所設置市の一覧は厚生労働省のウェブサイトで公開されています。

保健所管轄区域案内|厚生労働省

これに伴い、感染症法第64条において、感染症法の大半の条文の「都道府県知事は、」を、「保健所設置市(区)長は、」と読み替える(=同じ権限を与える)ことが明記されています。

すなわち、感染症法において、保健所設置市長には都道府県知事とほぼ同等の権限が与えられます。
(医療機関の指定などの一部の権限は都道府県知事のみです)

よって、

  • 自治体が保健所設置市である場合は、措置の実務を担うのは市役所の感染症担当部署
  • 自治体が保健所設置市でない場合は、措置の実務を担うのは都道府県庁の感染症担当部署

ということです。

  • 保健所設置市(区)長は、都道府県知事とほぼ同等の措置権限あり
  • 保健所設置市(区)は、都道府県とほぼ同等の措置を担う

感染症法が定める措置

感染症が発生しないように未然に予防したり、発生した感染症がまん延しないように防止するため、感染症法に定められている主な措置は下記のとおりです。

前記のとおり、これらの措置の実施主体は、都道府県知事又は保健所設置市(区)長、厚生労働大臣、医師、などに分かれています。

感染症法に定められた主な措置
措置 条文 内容 実施主体 権限vs義務
権限 義務
医師の届出 第12条
  • 診断確定した感染症を保健所に届け出る
  • 届出を基に、以下の措置を実施し、疾病統計を作成する
  • 診断した医師本人
感染症の発生の状況、
動向及び原因の調査
第15条
  • 積極的疫学調査(active surveillance)
    • 感染症疑い患者又は確定患者の、行動歴の把握、接触者の追跡調査など
  • 感染症疑い患者から検体を採取する
  • 都道府県知事
  • 保健所設置市長
  • 厚生労働大臣
  • 採取した検体を検査する
  • 都道府県知事
  • 保健所設置市長
健康診断 第17条
  • 感染症疑い患者医師による健康診断を受けさせる=医療機関の外来を受診させる
  • 受けるように「勧告」し、勧告に従わない場合は強制的に受けさせることができる
  • 都道府県知事
  • 保健所設置市長
就業制限 第18条
  • 感染症確定患者が、ある範囲の業務に従事することを一定期間制限する
  • 制限される業務は省令(感染症法施行規則)で別途定められている
    • 飲食業、不特定多数に接する業務など
  • 都道府県知事
  • 保健所設置市長
入院 第19条
第20条
  • 感染症疑い患者又は確定患者隔離入院させる
  • 入院先は感染症指定医療機関
  • 入院するように「勧告」し、勧告に従わない場合は強制的に入院させることができる
  • 都道府県知事
  • 保健所設置市長
移送 第21条
  • 感染症疑い患者又は確定患者を入院させる際に、自宅等から感染症指定医療機関まで、自治体が車両等で送り届ける
    • 感染症患者が公共交通機関等を利用するのを避けるのが目的
  • 都道府県知事
  • 保健所設置市長
消毒 第27条
  • 感染症の病原体に汚染された場所消毒する
  • 都道府県知事
  • 保健所設置市長
交通の制限 第33条
  • 消毒だけでは一類感染症の蔓延を防止できない場合に、感染症患者のいる場所又は病原体に汚染されたおそれのある場所の、交通を制限し遮断する
  • 2020年1月23日に武漢市及び周辺市に対して中国当局が実施した交通遮断に相当
  • 都道府県知事
  • 保健所設置市長
措置 条文 内容 実施主体 権限 義務
権限vs義務

感染症の「類型」

感染症の類型、特徴と主な疾患
類型 条文 特徴 主な疾患
一類感染症 第6条
第2項
  • 最もvirulenceやCFRが高く、ヒト-ヒト感染も容易である感染症
  • ウイルス性出血熱が多い
  • エボラ出血熱
  • ラッサ熱
  • クリミア・コンゴ出血熱
  • マールブルグ病
  • 南米出血熱
  • ペスト
  • 痘そう(天然痘)

※全7疾患

二類感染症 第6条
第3項
  • 一類感染症に次いでvirulenceやCFRが高いが、ヒト-ヒト感染は一類感染に劣る
  • 中東呼吸器症候群
  • 鳥インフルエンザA(H5N1)
  • 鳥インフルエンザA(H7N9)
  • 結核
感染症の類型と実施できる措置
措置 条文 テンプレート:Vertical

感染症指定医療機関について