差分

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それらの製法については,[https://www.who.int/docs/default-source/coronaviruse/risk-comms-updates/update37-vaccine-development.pdf?sfvrsn=2581e994_6 WHOの資料]や[https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/082400016/072000119/ 日経バイオテクの記事],[https://www.youtube.com/watch?v=lFjIVIIcCvc GAVIによるCG動画]などに簡潔にまとまっていますので,ご参照ください.
==3ワクチンの治験 phase 3 論文のかんたんまとめ論文と,そのインパクト==中国・武漢市で最初の患者が2019年12月に発見されてからわずか1年後の2020年12月,3ワクチンの治験 中国・武漢市で最初の患者が2019年12月に発見されてから'''わずか1年後'''の'''2020年12月''',3ワクチンの治験 phase 3 の結果を報告する論文がpeerの結果を報告する論文が peer-reviewed journalに掲載されました.journal に掲載されました.
{|class="wikitable"
|-
!ワクチン!引用!初出|-!Pfizerワクチン
|[https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMoa2034577 Polack, Fernando P., Stephen J. Thomas, Nicholas Kitchin, Judith Absalon, Alejandra Gurtman, Stephen Lockhart, John L. Perez, et al. “Safety and Efficacy of the BNT162b2 MRNA Covid-19 Vaccine.” New England Journal of Medicine 383, no. 27 (December 31, 2020): 2603–15. https://doi.org/10.1056/nejmoa2034577.]
|12月10日
|-
|!Modernaワクチン
|[https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMoa2035389 Baden, Lindsey R., Hana M. El Sahly, Brandon Essink, Karen Kotloff, Sharon Frey, Rick Novak, David Diemert, et al. “Efficacy and Safety of the MRNA-1273 SARS-CoV-2 Vaccine.” New England Journal of Medicine, December 30, 2020. https://doi.org/10.1056/nejmoa2035389.]
|12月30日
|-
|AstraZenecaワクチン
|[https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)32661-1/fulltext Voysey, Merryn, Sue Ann Costa Clemens, Shabir A Madhi, Lily Y Weckx, Pedro M Folegatti, Parvinder K Aley, Brian Angus, et al. “Safety and Efficacy of the ChAdOx1 NCoV-19 Vaccine (AZD1222) against SARS-CoV-2: an Interim Analysis of Four Randomised Controlled Trials in Brazil, South Africa, and the UK.” The Lancet 397, no. 10269 (December 8, 2020): 99–111. https://doi.org/10.1016/s0140-6736(20)32661-1.]
|12月8日
|}
 
サイト管理者の率直な感想を述べると,「病原体発見からわずか11ヶ月で(※どのワクチンも11月までの結果の集計)有望そうな3つもワクチンが登場するとは,予想を遙かに超えていた」です.
 
ワクチン開発は,古典的な製法による過去の実績では,数年から10年以上かかるのが一般的でした.
 
新興病原体に対する新規ワクチンは,病原体が登場するたびに開発は開始されるものの,[https://www.bcm.edu/departments/molecular-virology-and-microbiology/emerging-infections-and-biodefense/emerging-infectious-diseases 最近50年以内に登場したおよそ40種の新興病原体]のうち実際にヒトで実用化されたワクチンは,前述のエボラワクチンのみです.
:(※新型インフルエンザワクチンは,元々技術が確立されている季節性インフルエンザワクチンを応用する形なので,新興病原体への完全な新規ワクチンとはやや事情が異なります)
 
それも,エボラウイルスの発見が1976年,ワクチン開発が動物実験レベルで始まったのは2005年.前述のとおりウイルスベクターワクチンで,[https://en.wikipedia.org/wiki/RVSV-ZEBOV_vaccine rVSV-ZEBOVワクチン]と呼ばれました.<br>
これが緊急治験の形でヒトに本格的に投与されたのは,[https://ja.wikipedia.org/wiki/2014%E5%B9%B4%E3%81%AE%E8%A5%BF%E3%82%A2%E3%83%95%E3%83%AA%E3%82%AB%E3%82%A8%E3%83%9C%E3%83%A9%E5%87%BA%E8%A1%80%E7%86%B1%E6%B5%81%E8%A1%8C 2014年をピークに西アフリカで大流行した際]が初めてでした.しかし致死率が50%を超える病原体であることから,倫理的理由によりプラセボ群が設定されなかったため,治験結果は疑問視されました.<br>
次の[https://en.wikipedia.org/wiki/Kivu_Ebola_epidemic 2018年のコンゴ民主共和国での大流行]では,効果が疑問視されたままのエボラワクチンを人道的使用 compassionate use として投与しています.この使用実績を2019年に解析したところ,接種者のエボラ発症が未接種者に比べて[https://www.who.int/csr/resources/publications/ebola/ebola-ring-vaccination-results-12-april-2019.pdf 97.5%抑えられていた(VEが97.5%だった)]ことが判明し,ようやく効果が実証されました.<br>
それを踏まえ,WHOは2019年,[https://www.who.int/news/item/12-11-2019-who-prequalifies-ebola-vaccine-paving-the-way-for-its-use-in-high-risk-countries rVSV-ZEBOVに事前認証 prequalification] を出しました.ヒト治験開始の2014年から数えても'''5年'''が経過しています.
 
それが,新型コロナでは'''たったの1年'''.しかもヒト実用化が初めてのmRNAワクチンが2つも含まれています.<br>
 
長期的な効果や未発見の副反応など課題は山積みですが,mRNAワクチンであれウイルスベクターワクチンであれ今回で実績が定まれば,再び新興病原体が登場しても遺伝子工学によって速やかにワクチンを新規開発することができます.<br>
'''新型コロナだけでなく未知の新興病原体への対策にも希望を切り拓いた'''という点で,'''ワクチン史に残る出来事'''だと言えるでしょう.
===わかっていること===

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