「新型コロナワクチンまとめ(医療従事者向け)」の版間の差分

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*治験参加人数(約1万~4万人)と観察期間の範囲では検出できなかった稀な重篤有害事象が今後報告されるのか,まだわからない.
 
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*治験参加人数と観察期間の範囲では検出できなかった抗体依存性免疫増強 ADE が今後報告されるのか,まだわからない.
 
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以上を踏まえて,現時点で下記のことははっきり言えるでしょう.
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*3ワクチンとも,16 or 18歳以上の成人が接種することで,70-95% の VE (“割引率”)でCOVIDの発症を予防することができる
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**他者への感染予防効果は不明だが,接種を受けた本人のメリットははっきりとある
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*3ワクチンとも,接種を大いにためらうような重篤な有害事象は今のところ明らかではない
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**むしろ第3波の只中では,COVIDに感染して不利益を被ったり生命の危険にさらされるリスクの方が,未知の重篤有害事象よりも高いと言える
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==3ワクチンが普及する場合に想定されるシナリオ==
 
==3ワクチンが普及する場合に想定されるシナリオ==

2021年1月13日 (水) 16:40時点における版

目次

おことわり

本ページは,新型コロナワクチンについての医療従事者向けのまとめです.

内容は2021年1月10日時点でサイト管理者が得ている情報に基づいています.

重要な情報更新があった場合はページ内容も更新するよう努力しますが,すべての情報をリアルタイムには網羅できていないことをご承知おきください.

また,一般の方の閲覧をお断りするものではありませんが,医療従事者以外には難解な箇所もありますのでご了承ください.

なお,個人のワクチン接種の是非を含めて,ご自身の健康に関わる疑問等については,かならず主治医,かかりつけの医師,保健所等にご相談ください

要点と個人的見解

開発が進む新型コロナワクチン

2020年1月10日に中国当局が新型コロナウイルス発見とその遺伝子配列を公表したその日から(※),この新興病原体に対するワクチン開発競争が始まりました.

(※)Pfizer-BiONTechのphase 3論文には,実際に「1月10日から開発に着手した」と書かれてあります.

日本を含む世界中の研究機関や製薬会社,バイオベンチャー企業がしのぎを削って開発を進めている様子は,下記のサイト等で随時更新されています.

※サイトごとにまとめ方が異なるため,開発段階ごとのワクチン数はそれぞれ異なります.

日本で接種される可能性が高い3ワクチン

輸入契約が結ばれている等の理由で日本で接種される可能性が高い,かつ既に開発国で認可済み(緊急使用承認含む)のワクチンは,下記の3ワクチンです.

開発元 開発拠点国 開発コード名
米国 BNT162b2
米国 mRNA-1273
英国 AZD1222

本ページでは,2021年1月10日時点の情報を基に,上記3ワクチンについてまとめています.

以下,3ワクチンを次のように呼ぶことにします.

  • Pfizerワクチン
  • Modernaワクチン
  • AstraZenecaワクチン

米国と英国では既に認可済み

3ワクチンは開発拠点国の米国と英国で既に使用認可が下り,医療従事者をはじめとして市中での接種が始まっています.

ワクチン 米国での認可 英国での認可
Pfizerワクチン 2020年12月11日 緊急使用認可(同23日改訂) 2020年12月2日 通常認可
Modernaワクチン 2020年12月18日 緊急使用認可 2021年1月8日 通常認可
AstraZenecaワクチン (未認可) 2020年12月30日 通常認可

ワクチンの効果「vaccine efficacy」とは,「接種しなかったので感染した人数」から「接種したけど感染した人数」への「割引率」

本題に入る前に,ワクチンの「効果」を知っておきましょう.

「このワクチンを接種すると95%の予防効果がある」とは具体的にどういう意味なのか?

ワクチン学では,ワクチンの効果を「vaccine efficacy, VE」と呼びます.
私の知る限り定まった日本語訳はないようです.直訳すれば「ワクチン効果」ですが,あまり見かけない表現ですね.
私は英略称のまま「VE」と呼んでいます.

Vaccine efficacy, VEの単位は「%(パーセント)」です.

EBMを学んだ方向けの表現をすれば,こういうことです.
何のことはない,相対リスク減少 RRRのことなんですね.

ワクチンの効果 vaccine efficacy (VE)

=接種群のプラセボ群に対する相対リスク減少(%)

噛み砕いて言えば,こうですね.

ワクチンの効果 vaccine efficacy (VE) とは,

接種しなかったので感染した人数」から
接種したけど感染した人数」への
割引率

例として,新しいワクチンの治験に未感染者20,000人が参加し,10,000人が実薬群,10,000人がプラセボ群に割り付けられたとします.

割付 割付人数
実薬群 10,000
プラセボ群 10,000

接種後に一定期間観察したところ,実薬群では5人が感染したのに対し,プラセボ群では100人が感染しました.

割付 割付人数 感染者数 感染率
実薬群 10,000 5 5/10,000=0.05%
プラセボ群 10,000 100 100/10,000=1.00%

実薬群の感染率 5/10,000=0.05% は,プラセボ群の感染率 100/10,000=1.00% に比べて,95%の減少,つまり「95%割引」です.

割付 割付人数 感染者数 感染率 感染率の減少度合い=割引率
実薬群 10,000 5 5/10,000=0.05% (1.00 - 0.05)÷1.00
=0.95 (95%)
プラセボ群 10,000 100 100/10,000=1.00%

この「95%」が,ワクチンの効果 vaccine efficacy, VEなんですね.
ワクチンを接種することで「感染リスクが95%割り引かれる」と言うこともできます.割引率95%の超お値打ち品ということです.

3ワクチンの製法について

3ワクチンのうち,PfizerワクチンとModernaワクチンは「mRNAワクチン(メッセンジャーRNAワクチン)」です.
残るAstraZenecaワクチンは「ウイルスベクターワクチン」です.

ワクチン 製法
Pfizerワクチン
Modernaワクチン
mRNAワクチン
AstraZenecaワクチン ウイルスベクターワクチン

mRNAワクチンはヒトでの実用化が史上初,ウイルスベクターワクチンはヒト実用化が史上2例目という,どちらも最先端の製法と言えます.

名前だけでは何のことかわかりませんね.
簡単に説明しましょう.

mRNAワクチンとは

ヒトの細胞が生命活動をする際に,自分が持つ遺伝子(化学的にはDNAの分子)から必要な部分を読み取ってタンパク(タンパク質)を合成することは,よく知られています.

遺伝子DNAを読み取る際には,DNAの二重らせん鎖をいったんほどき,読み取り部分のDNA配列にマッチするようなRNAを作ります.
このRNAを「メッセンジャーRNA,mRNA」と呼ぶのでした.

メッセンジャーRNA,mRNAは細胞核の中で作られ,完成後は細胞核の外=細胞質の中に出されます.

細胞質の中には大量のアミノ酸があり,mRNA配列に対応したアミノ酸がリボソームと転移RNAのはたらきで次々に結合することで,目的のタンパクが作られるという仕組みです.

※ここまでの一連のプロセスを美しいCGで解説した動画がYouTubeで公開されています.是非ご覧ください.

つまり,ヒトの細胞は,mRNAがあればタンパクを作ることができるのです.

これを利用したのがmRNAワクチンです.

ヒトの免疫が病原体に応答して記憶するときには,その病原体特有のタンパクを記憶します.
ということは,ヒトの免疫が応答しやすい病原体タンパクを選んで,それをヒトの体に入れれば,免疫が付きます.
しかし病原体タンパクを人工合成するのは簡単ではありません.

一方で,遺伝子工学の進歩により,RNAを人工合成することは非常に容易になりました.

病原体タンパクを作るようなmRNAを人工的に合成して,ヒトの体に入れれば,ヒトの細胞がmRNAに基づいて病原体タンパクをどんどん作ってくれます.
作られた病原体タンパクは,単なるタンパクであって病原体そのものではありませんので,ヒトに感染症を起こすことは決してありません.
しかしその病原体タンパクにヒトの免疫が反応することで,病原体に対する免疫を付けることができます.

これがmRNAワクチンの原理です.

「病原体のタンパクをヒト自身に作らせる」というのが,古典的なワクチンとは全く異なる新しい技術なんですね.

なお参考までに古典的なワクチンに比喩するなら,病原体タンパクだけが体内で増えるという点,接種する物質もmRNAという「自己増殖機能を持たない分子」である点で,不活化ワクチンに似ていると言えるでしょう.言い換えれば,生ワクチンとは決定的に違います.

mRNAワクチンの専門的な解説については,下記の総説論文がわかりやすいです.

Pardi, N., Hogan, M., Porter, F. et al. mRNA vaccines — a new era in vaccinology. Nat Rev Drug Discov 17, 261–279 (2018). https://doi.org/10.1038/nrd.2017.243

ウイルスベクターワクチンとは

ウイルスベクターワクチン viral vector vaccine は,日本の行政文書では「組換えウイルスワクチン」と呼ばれることもあります.

上記のとおり,病原体タンパクを作るmRNAをヒトの体内に入れるのがmRNAワクチンです.

それに対して,病原体タンパクを作る遺伝子を,他の無関係なウイルスの遺伝子の中に組み込んで(無関係ウイルスの遺伝子を組み換えて),組み換え遺伝子を持つ無関係ウイルスをヒトの体内に入れるのが,ウイルスベクターワクチンです.

無関係ウイルスは遺伝子を運ぶだけの役割であり,「ベクター vector」と呼ばれます.

ベクターは「媒介体」と訳されることもありますが,病原体を生物から生物へとうつす(媒介する)虫などのこともベクターと呼びますね.例えば日本脳炎やデング熱を媒介するやツツガムシ病やSFTSを媒介するマダニはベクターです.

どんなウイルスも,生物の細胞の中に入ると自分が持つ遺伝子を細胞の中に出して,生物の細胞が持つアミノ酸や塩基をフル活用し,自分と同じ遺伝子とタンパクを複製する性質を持っています.

ベクターウイルスもヒトの体内で細胞内に入り,自分が持つ遺伝子によってタンパクを作るわけですが,病原体の遺伝子がそこに組み込まれているためにヒト細胞は病原体タンパクをせっせと作ることになります.

つまり,ベクターウイルスがヒト細胞に入って組み換え遺伝子を細胞内に出した時点で,mRNAワクチンと同じことが起きるのです.

これがウイルスベクターワクチンの仕組みです.
病原体タンパクをヒト細胞に作らせるために,mRNAを直接入れるのがmRNAワクチンですが,遺伝子をベクターウイルスに運んでもらうのがウイルスベクターワクチン,という違いですね.

なお,ベクターウイルスは“生きた”ウイルスとしてヒト体内に入るため,元のウイルス自体に病原性があっては困ります.当然のこととして,ヒトには一切病気を起こさないウイルスだけがベクターウイルスとして選ばれます.

ヒト用ワクチンとしては,エボラウイルスに対して実用化された「rVSV-ZEBOV vaccine」が最初です(※エボラワクチンの経緯は後述).

なおに古典的なワクチンに比喩するのは,ちょっと難しいです.“生きた”ウイルスを接種するという点では生ワクチンのようにも思えますが,今回のAstraZenecaワクチンでは自己複製機能つまり増殖機能を欠失させた「チンパンジー・アデノウイルス」を使っているため,厳密には“生きた”ウイルスとは言えません.組み換え遺伝子をヒト細胞へ運ぶベクターとしての役割のみに注目すれば,mRNAワクチンと同じく不活化ワクチン的な要素が強いと言えるかもしれません.つまり,古典的なワクチンに喩えるのは難しいですね.

ベクターウイルスワクチンの専門的な解説には,下記の総説をご参照ください.

Ewer KJ, Lambe T, Rollier CS, et al. Viral vectors as vaccine platforms: from immunogenicity to impact, Current Opinion in Immunology, 41, 47-54(2016). https://doi.org/10.1016/j.coi.2016.05.014.

その他の新型コロナワクチン候補の製法

今回実用化された3ワクチンの製法は2種類ですが,他にも様々な製法の新型コロナワクチンが開発中です.

それらの製法については,WHOの資料日経バイオテクの記事GAVIによるCG動画などに簡潔にまとまっていますので,ご参照ください.

3ワクチンの治験 phase 3 論文と,そのインパクト

中国・武漢市で最初の患者が2019年12月に発見されてからわずか1年後2020年12月,3ワクチンの治験 phase 3 の結果を報告する論文が peer-reviewed journal に掲載されました.

ワクチン 引用 初出日
Pfizerワクチン Polack, Fernando P., Stephen J. Thomas, Nicholas Kitchin, Judith Absalon, Alejandra Gurtman, Stephen Lockhart, John L. Perez, et al. “Safety and Efficacy of the BNT162b2 MRNA Covid-19 Vaccine.” New England Journal of Medicine 383, no. 27 (December 31, 2020): 2603–15. https://doi.org/10.1056/nejmoa2034577. 12月10日
Modernaワクチン Baden, Lindsey R., Hana M. El Sahly, Brandon Essink, Karen Kotloff, Sharon Frey, Rick Novak, David Diemert, et al. “Efficacy and Safety of the MRNA-1273 SARS-CoV-2 Vaccine.” New England Journal of Medicine, December 30, 2020. https://doi.org/10.1056/nejmoa2035389. 12月30日
AstraZenecaワクチン Voysey, Merryn, Sue Ann Costa Clemens, Shabir A Madhi, Lily Y Weckx, Pedro M Folegatti, Parvinder K Aley, Brian Angus, et al. “Safety and Efficacy of the ChAdOx1 NCoV-19 Vaccine (AZD1222) against SARS-CoV-2: an Interim Analysis of Four Randomised Controlled Trials in Brazil, South Africa, and the UK.” The Lancet 397, no. 10269 (December 8, 2020): 99–111. https://doi.org/10.1016/s0140-6736(20)32661-1. 12月8日

私の率直な感想を述べると,「病原体発見からわずか11ヶ月で(※)有望そうな3つもワクチンが登場するとは,予想を遙かに超えていた」です.

(※病原体発見は2020年1月で,どのワクチンも2020年11月までの結果を集計しています)

ワクチン開発は,古典的な製法による過去の実績では,数年から10年以上かかるのが一般的でした.

新興病原体に対する新規ワクチンは,病原体が登場するたびに開発は開始されるものの,最近50年以内に登場したおよそ40種の新興病原体のうち実際にヒトで実用化されたワクチンは,前述のエボラワクチンのみです.

(※新型インフルエンザワクチンは,元々技術が確立されている季節性インフルエンザワクチンを応用する形なので,新興病原体への完全な新規ワクチンとはやや事情が異なります)

エボラワクチンは治験でのヒト投与から効果確認まででも5年かかりました.

それが,新型コロナではゼロからのスタートからたったの1年で先進国2ヶ国が承認するところまでこぎつけました.しかもヒト実用化が初めてのmRNAワクチンが2つも含まれています.

長期的な効果や未発見の副反応など課題は山積みですが,mRNAワクチンであれウイルスベクターワクチンであれ今回で実績が定まれば,再び新興病原体が登場しても遺伝子工学によって速やかにワクチンを新規開発することができます.

新型コロナだけでなく未知の新興病原体への対策にも希望を切り拓いたという点で,ワクチン史に残る出来事だと言えるでしょう.

【閑話】

エボラウイルスの発見が1976年,ワクチン開発が動物実験レベルで始まったのは2005年でした.前述のとおりウイルスベクターワクチンで,rVSV-ZEBOVワクチンと呼ばれました.

これが緊急治験の形でヒトに本格的に投与されたのは,2014年をピークに西アフリカで大流行した際が初めてでした.しかし致死率が50%を超える病原体であることから倫理的理由によりプラセボ群を設定せず,実薬群のsingle armのみの治験でした.それゆえに,治験結果は疑問視されました.

次の2018年のコンゴ民主共和国での大流行では,効果が疑問視されたままのエボラワクチンを人道的使用 compassionate use として投与しています.この使用実績を2019年に解析したところ,接種者のエボラ発症が未接種者に比べて97.5%抑えられていた(VEが97.5%だった)ことが判明し,ようやく効果が実証されました.

それを踏まえ,WHOは2019年,rVSV-ZEBOVに事前認証 prequalification を与えました.WHOによる事前認証とは,薬剤や医療機器等を自国で検証することが困難な国・地域向けにその品質や安全性を国際機関として担保する制度のことで,“WHOによるお墨付き”に相当します.そこに至るまでヒト治験開始の2014年から数えても5年,動物実験レベルからは14年,病原体発見からは43年が経過しています.

【閑話休題】

3ワクチン論文のかんたんまとめ

では本題です.

ここでは3ワクチン論文の主要なところを整理します.

より詳細なまとめはこのページの末尾にあります(←クリック!).興味のある方はご参照ください.

Pfizerワクチン Modernaワクチン AstraZenecaワクチン
参加者
  • 16-89歳(中央値52歳)
  • 妊婦,小児は対象外
  • 18-95歳(平均値51.4歳)
  • 妊婦,小児は対象外
  • 18歳以上(最高齢,平均,中央値記載なし)
  • 除外基準は明記なし
投与法
  • 実薬:30μg/0.3mL
  • プラセボ:生理食塩水
  • 2回接種;21日間隔
  • 筋注(三角筋)
  • 実薬:100μg/0.5mL
  • プラセボ:生理食塩水
  • 2回接種;28日間隔
  • 筋注(三角筋)
  • 実薬:次のいずれか
    • 1回目低用量LD→2回目標準量SD
    • 1回目標準量SD→2回目標準量SD
      • LD:2.2×1010含有
      • SD:5.0×1010含有
  • プラセボ:髄膜炎菌ワクチンACWY
    • 安全性解析対象では一部生理食塩水
  • 2回接種;4-12週以上
  • 筋注(三角筋)
COVID発症の予防効果

2回目接種7日後以降のCOVID発症

  • 実薬群 8人/2,214人年
  • プラセボ群 162人/2,222人年
  • Vaccine efficacy 95.0%
    • 95%信頼区間 90.3-97.6

2回目接種14日後以降のCOVID発症

  • 実薬群 3.3人/1,000人年
  • プラセボ群 56.5人/1,000人年
  • Vaccine efficacy 94.1%
    • 95%信頼区間 89.3-96.8

2回目接種14日後以降のCOVID発症

  • 実薬LD→SD群 3人/1,367人
  • プラセボ群 30人/1,374人
  • Vaccine efficacy 90.0%
    • 95%信頼区間 67.4-97.0
  • 実薬SD→SD群 27人/4,440人
  • プラセボ群 71人/4,455人
  • Vaccine efficacy 62.1%
    • 95%信頼区間 41.0-75.7
重症COVIDの予防効果

接種後時期を問わない重症COVID

  • 実薬群 1人/4,021人年
  • プラセボ群 9人/4,006人年
  • Vaccine efficacy 88.9%
    • 95%信頼区間 20.1-99.7

2回目接種14日後以降の重症COVID

  • 実薬群 0人/14,073人
  • プラセボ群 30人/14,073人
  • Vaccine efficacy 100%
    • 95%信頼区間 算出不能-100
有害事象
  • ワクチン反応性症状はいずれも実薬群で多い
  • その他の重篤有害事象は死亡含めて両群間に明らかな偏りはない
  • ワクチン反応性症状はいずれも実薬群で多い
  • その他の重篤有害事象は死亡含めて両群間に明らかな偏りはない
  • 重篤有害事象は死亡含めて両群間に明らかな偏りはない
  • 実薬群2回目接種14日後に発生した横断性脊髄炎1件はワクチンとの関連の可能性がある

一見してわかるとおり,mRNAワクチンであるPfizerワクチンとModernaワクチンは,非常に似通った結果となっています.かつ,2回目接種直後(7日or14日後以降)のCOVID発症予防について,vaccine efficacy, VE は95%前後と極めて優れた結果を示しました.加えて,重症COVIDについても約90%超の VE を示し,少なくとも治験期間中の観察においては,抗体依存性免疫増強 ADE(※)の懸念を跳ね返しました.

(※)抗体依存性免疫増強 ADE については後述

AstraZenecaワクチンも,投与量が異なる実薬2群で約90%または70%と高い VE を示しました.
ただし,投与量が異なっていることについては,かなり複雑な背景があります.詳しくは下記の「方法:治験での投与法」をご参照ください.

そして,有害事象については,3ワクチンとも「ワクチンとして当然予想される,接種部位疼痛や発熱などの反応性症状」が実薬群で多く観察されたのみで,ワクチン関連が疑われて注意を要する重篤有害事象はほぼありませんでした(※).

(※)AstraZenecaワクチンでは実薬との関連が現時点では否定できない横断性脊髄炎の報告が1例あり,さらなる検証が待たれます.

一言で言えば,「効果が期待できて,重篤または接種をためらう有害事象が観察されないワクチンを,よくぞこの短期間で3種も実用化までこぎつけたものだ」と感嘆するレベルです.

3ワクチン論文からわかること,わからないこと

3ワクチン論文から効果と有害事象を読み取ることができますが,論文から「わかること」と「わからないこと」を改めて整理すると,下記のとおりです.

判明した結果ばかりに目を奪われず,「まだわからないこと」をしっかり認識することが重要です.

論文からわかること

  • PfizerとModernaのmRNAワクチンでは,2回目接種の7日or14日後以降の時点で,COVIDの発症(症状が出てから検査・診断されるCOVID)が,約95%の VE で予防できる.
  • AstraZenecaのウイルスベクターワクチンでは,2回目接種の14日後以降の時点で,COVIDの発症,約70-90%の VE で予防できる.
  • 3ワクチンともに,ワクチンとして当然予想される接種部位疼痛や発熱などの反応性症状はプラセボよりも多く観察されたが,明らかにワクチンが原因と思われる重篤な有害事象は治験期間中には観察されなかった.

まだわからないこと

  • 3ワクチンとも,2回目接種から長期間経過後(例えば半年後,1年後,5年後など)でも予防効果が続くのか,いずれ減弱してプラセボとの差がなくなってしまうのか,まだわからない.
※2回目接種からCOVID発症までの治験中の平均追跡期間は,3ワクチンとも40日台~80日台,すなわちせいぜい3ヶ月以内.
※治験参加者をさらに長期間観察すれば長期効果もわかっていくが,世界的大流行が続く中でプラセボ接種者に本当のワクチンを打たないまま1年も2年も経過観察するのが倫理的に許されるのか,議論が出る可能性がある.ただしプラセボ接種者に今後本当のワクチンを接種すれば,その後の長期間の効果は判定不可能になる.
  • PfizerワクチンとModernaワクチンでは,無症状COVID感染が予防できるのか,まだわからない.
  • 3ワクチンとも,他者への感染を予防できるのか,まだわからない.
※悪いシナリオとしては,「3ワクチンで発症は予防できるが他者への感染性は予防できない可能性」がある.すなわち集団免疫が獲得できず,接種した個人だけにメリットがある可能性が,今のところは否定できない.
  • 治験参加人数(約1万~4万人)と観察期間の範囲では検出できなかった稀な重篤有害事象が今後報告されるのか,まだわからない.
  • 治験参加人数と観察期間の範囲では検出できなかった抗体依存性免疫増強 ADE が今後報告されるのか,まだわからない.

2021年1月10日時点ではっきり言えること

以上を踏まえて,現時点で下記のことははっきり言えるでしょう.

*3ワクチンとも,16 or 18歳以上の成人が接種することで,70-95% の VE (“割引率”)でCOVIDの発症を予防することができる
    • 他者への感染予防効果は不明だが,接種を受けた本人のメリットははっきりとある
  • 3ワクチンとも,接種を大いにためらうような重篤な有害事象は今のところ明らかではない
    • むしろ第3波の只中では,COVIDに感染して不利益を被ったり生命の危険にさらされるリスクの方が,未知の重篤有害事象よりも高いと言える

3ワクチンが普及する場合に想定されるシナリオ

良いシナリオ①感染爆発国で新規患者数が減少する

良いシナリオ②世界的に新規患者数が減少する

良いシナリオ③世界でコロナが収束するか風邪程度のウイルスに変異して定着する

現実のハードル

人口が多い国ほど接種完了までに時間がかかる

感染者数が少ない国ではワクチンの効果を国として実感しにくい

敢えて想像する悪いシナリオ

悪いシナリオ①効果が短期間しかもたない

悪いシナリオ②重い副反応が後からわかってワクチン忌避が起きる

悪いシナリオ③コロナ重症化が後からわかってワクチン忌避が起きる

悪いシナリオ④国際渡航その他の場面で接種を要求(強要)されたり差別が起きる

悪いシナリオ⑤接種済みを免罪符と勘違いして感染予防策を無視する人が増える

日本でのコロナワクチン接種体制について

厚生労働省|新型コロナウイルス感染症のワクチンについて

改正予防接種法における扱い

日本政府による調達計画

日本での治験と認可

接種の是非の判断を迫られる人々

3ワクチン論文の詳細なまとめ

この項では3ワクチン論文の詳細をまとめています.

重要な部分を,各要素に分けて整理します.

方法:治験の参加者

Pfizerワクチン Modernaワクチン AstraZenecaワクチン
年齢
  • 16-89歳(中央値52歳)
  • 55歳以上が42.3%
  • 18-95歳(平均値51.4歳)
  • 65歳以上が24.8%
  • 18歳以上
    • 最高齢,平均,中央値記載なし
  • 70歳以上が3.8%
背景
  • 基礎疾患ありが20.9%
    • HIV,B型肝炎,C型肝炎の各感染者を含む
  • 女性が48.9%
  • 白人が82.9%
  • 重症化リスクありが22.5%
  • 女性が47.4%
  • 白人が79.5%
  • 登録時スクリーニングでCOVID-19既感染が2.2%
  • 基礎疾患ありが約10%
  • 女性が約40%
  • 白人が約85%
  • 医療従事者が約80%

※4つの異質な治験の統合のためサイト管理者による概算値

除外基準
  • 妊婦は除外
  • COVID-19既感染は除外
  • 免疫抑制状態は除外
  • 妊婦は除外
  • HIV,B型肝炎,C型肝炎の各感染者は除外

論文中には除外基準の明記なし

対象人数

Per protocol解析対象:

  • 実薬群 18,198人
  • プラセボ群 18,325人

Per protocol解析対象:

  • 実薬群 14,134人
  • プラセボ群 14,037人

効果の解析対象:

  • 実薬群 5,807人
  • プラセボ群 5,829人

実はAstraZenecaの論文は,それぞれ「COV001」「COV002」「COV003」「COV005」と名付けられた4つの異質な治験を,統合した結果を示しています.

このうち COV001 と COV005 は,安全性評価と用量決定が主目的の phase 1/2 です.そのためこれら2治験の参加者の結果は,副反応の集計対象にはしていますが,効果の集計からは外されています.

COV002 と COV003 が phase 2/3 です.効果の集計にはこれら2治験の参加者の結果のみ反映されています.

方法:治験での投与法

Pfizerワクチン Modernaワクチン AstraZenecaワクチン
実薬

含有量 30μg/0.3mL

含有量 100μg/0.5mL

ベクターウイルス量

  • 低用量LD 2.2×1010
    • COV002での1回目
  • 標準量SD 5.0×1010
    • COV002での2回目及びCOV003
プラセボ

生理食塩水

生理食塩水

  • 効果解析対象のCOV002, 003では髄膜炎菌ワクチンACWY
  • 安全性解析対象のCOV001, 002, 003では髄膜炎菌ACWY,COV005では生理食塩水
接種スケジュール

2回接種;21日間隔

2回接種;28日間隔

  • 計画では2回接種・4週間隔
  • 実際にはCOV002で殆どが9週以上,半数が12週以上の間隔で,COV003では間隔が4-12週でばらついた
投与経路

筋注(三角筋)

筋注(三角筋)

筋注(三角筋)

AstraZenecaの投与法がかなり複雑になってしまっています.理由は以下の事情によるものです.

「参加者」の項で説明したとおり,AstraZenecaでの効果を解析する治験は「COV002」と「COV003」の2つのみです.

論文によると,COV002で製造した実薬ロットを検定したところ,ベクターウイルス量が測定手法によって大きく異なる結果が出てしまったそうです.

※同一ロットを,分光光度法で測定した場合でベクターウイルス量 5.0×1010,定量PCR法で測定した場合で 2.2×1010

先に実施したCOV001において,分光光度法による測定で5.0×1010と安全用量を決定していたため,一貫性を保つためにCOV002の1回目投与ではこのロットを接種しました.

しかし,COV002の1回目投与後の副反応を観察したところ,想定しうるワクチン反応性症状(接種部位の腫脹や発熱など)の頻度が事前予想よりも低いことがわかりました.論文にはそれ以上の記載がありませんが,私の想像では,治験担当者は「1回目ロットのベクターウイルス含有量が予定よりも少なかったかも…」と考えたかもしれません.

さらに論文によると,分光光度法によるウイルス量測定において,実薬に含まれる添加剤が分光光度測定に干渉することが判明したそうです.つまり分光光度法ではウイルス量を正確に測定できないことがわかったのです.

1回目ロットのベクターウイルス量が少ない可能性がある上に,当初計画の検定法では本当に少ないかどうかすら正確に測定できないことがわかった訳ですから,治験担当者達は相当頭を抱えたのではないかと私は想像しています.

論文によると,治験担当者は監視当局と協議して許可を得た上で,COV002で使用するロットの検定を定量PCR法測定で行うよう,中途で治験プロトコルを変更したそうです.定量PCR法で5.0×1010と測定されたロットに中途から切り替えることになったため,COV002の実薬群参加者の一部は結果的に,1回目に2.2×1010含有の実薬を,2回目には5.0×1010含有の実薬を,それぞれ接種することになったのです.

※論文では2.2×1010含有の実薬を「low dose, LD」と呼び,5.0×1010含有の実薬を「standard dose, SD」と呼んでいます.

また,一連の中間検証,監視当局との協議やプロトコル変更に時間を要したため,COV002の2回目接種は当初計画の4週間を大きく超えてしまいました.

1回目のLD投与群に対する2回目としてのSD投与は,殆ど(99%超)の対象者が9週間以上の間隔で,うち半数以上(52%超)は12週以上という大幅遅延の接種間隔となっています.

一方で,COV002の中でも遅い時期=SDロットが確立された後に登録した参加者は,1回目でもSDを投与されました.2回目投与も,早期登録参加者よりは短い間隔で接種されています.

(※本当は上記事情に加えて,COV002の若年参加者(55歳以下)を早期に登録した上で当初は1回のみの接種スケジュールだったところLDが判明したためブースター目的に2回目接種を急遽加えるよう変更したとか,同じCOV002でも高齢参加者(56歳以上)は遅くに登録した上で当初から2回接種スケジュールの計画だったとか,ややこしすぎる事情もあります)

なお,COV003はSDロットが確立された後で登録が始まったようです.そのためCOV003参加者の実薬群は全員が1回目からSD投与ですし,参加者の60%超は2回目を6週間以内に接種しています.

このとおりAstraZenecaワクチンは,ロット検定法の不備により,中途変更を含むあまりに複雑な治験構造となってしまいました.治験としてそれはどうなんだと正直疑問ですが,新型コロナのワクチン開発は超緊急課題ですから,特別に許されたのかもしれません….

AstraZenecaワクチンはそれらの点を割り引いて評価する必要があると,私は考えています.

方法:効果(エンドポイント)と有害事象の検証方法

以下の表ではすべて「実薬群ではプラセボ群に比べて」を省略しています

Pfizerワクチン Modernaワクチン AstraZenecaワクチン
一次エンドポイント
  • 2回目接種の7日後以降の時点で,COVIDの既往がない者での,COVIDの発症が減少するか?
  • 2回目接種の14日後以降の時点で,COVIDの既往がない者での,COVIDの発症が減少するか?
  • COVIDの発症が減少するか?
    • Methods欄には接種回数及び接種後期間の明記はないが,Resultsを読むと「2回目接種の14日後以降」のCOVID発症を評価していることがわかる
二次エンドポイント
  • 各接種後の時期を問わず,COVIDの重症化が減少する,又は増加するか?
  • COVIDの重症化が減少する,又は増加するか?
    • Methods欄には観察時期の言及はないが,Resultsを読むと「2回目接種の14日後以降」の重症COVIDを評価していることがわかる
  • Methods欄には明記なし
    • ただしCOV002参加者には,無症状COVIDを検出するために,鼻咽頭拭い液を1回目接種後から毎週自己採取して検査センターに郵送するよう求めたことから,無症状COVIDの減少が実質的な二次エンドポイント(の1つ)と解釈できる
予想される有害事象
  • 各接種後の7日以内に,事前予想されるワクチン反応性症状が増加するか?
  • 各接種後の7日以内に,事前予想されるワクチン反応性症状が増加するか?
  • 参加者に24時間対応の電話番号を知らせ,いかなる症状(COVID様又は有害事象問わず)の出現時にもコールするよう求めた
    • 追跡予定期間の明記なし
その他の有害事象
  • 2回目接種の1ヶ月以内に,反応性症状以外の有害事象が増加するか?
  • 2回目接種の6ヶ月以内に,反応性症状以外の重篤な有害事象が増加するか?
  • 2回目接種の28日以内に,反応性症状以外の有害事象が増加するか?
  • 1回目接種の759日(2年1ヶ月)以内に,反応性症状以外の重篤な有害事象が増加するか?
  • 治験からの脱落につながる有害事象が増加するか?

結果:効果 vaccine efficacy

いよいよ結果,vaccine efficacy, VE です.

下表において「平均追跡」はいずれも論文中にはありません.論文中に記載された人年/人日と解析対象人数/at risk人数から,私が逆算したものです.

どのワクチンも「2回目の7/14日後以降」という極めて短期間でエンドポイントを見ているため,予防効果がどれぐらいの期間続くのか予想できません.せめて2回目接種からCOVID発症までの平均追跡期間を見ることで,「70%や95%というVEが保たれるのは平均で少なくともどのぐらいの期間か」を考えることができます.

もちろん,3論文ともKaplan-Meier法による累積発症グラフを掲載しており,そちらの方が視覚的にわかりやすいです.是非ご参照ください.著作権の関係でグラフを本ページに転載することができないため,代わりに平均追跡期間を計算した次第です.参考程度にお考えください.

Pfizerワクチン Modernaワクチン AstraZenecaワクチン
一次エンドポイント

2回目7日後以降のCOVID発症

  • 実薬群 8人/2,214人年
    • 2,214人年中17,411人がat risk
      →平均追跡46.4日
  • プラセボ群 162/2,222人年
    • 2,222人年中17,511人がat risk
      →平均追跡46.3日
  • VE 95.0%
    • 95%CI 90.3-97.6

2回目14日後以降のCOVID発症

  • 実薬群 11人;3.3人/1000人年
    • 解析対象14,134人
      →平均追跡86.1日
  • プラセボ群 185人;56.5人/1000人年
    • 解析対象14,073人
      →平均追跡84.9日
  • VE 94.1%
    • 95%CI 89.3-96.8

2回目14日後以降のCOVID発症
LD→SD投与群
(COV002の一部)

  • 実薬群 3人/1,367人
    • 73,313人日→平均追跡53.6日
  • プラセボ群 30人/1,374人
    • 72,949人日→平均追跡53.1日
  • VE 90.0%
    • 95%CI 67.4-97.0

SD→SD投与群
(COV002の一部+COV003)

  • 実薬群 27人/4,440人
    • 174,986人日→平均追跡39.4日
  • プラセボ群 71人/4,455人
    • 174,279人日→平均追跡39.1日
  • VE 62.1%
    • 95%CI 41.0-75.7

LD/SD問わず全集計

  • 実薬群 30人/5,807人
    • 248,299人日→平均追跡42.8日
  • プラセボ群 101人/5,829人
    • 247,228人日→平均追跡42.4日
  • VE 70.4%
    • 95%CI 54.8-80.6

2回目14日後以降の無症候COVID感染

  • 実薬群 29人/3,288人
    • 151,673人日→平均追跡46.1日
  • プラセボ群 40人/3,350人
    • 152,138人日→平均追跡45.4日
  • VE 27.3%
    • 95%CI -17.2-54.9 ※有意差なし
二次エンドポイント

接種後時期を問わない重症COVIDの減少又は増加

  • 実薬群 1人/4,021人年
    • 4,021人年中21,314人がat risk
      →平均追跡68.9日
  • プラセボ群 9/4,006人年
    • 4,006人年中21,259人がat risk
      →平均追跡68.8日
  • VE 88.9%
    • 95%CI 20.1-99.7

2回目14日後以降の重症COVIDの減少又は増加

  • 実薬群 0人/14,073人
  • プラセボ群 30/14,073人
  • VE 100%
    • 95%CI 算出不能-100

結果:有害事象

Pfizerワクチン Modernaワクチン AstraZenecaワクチン
予想される有害事象

各接種7日後以内のワクチン反応性症状

実薬群% プラセボ群%
接種部疼痛 66-83 8-14
発赤 5-7 1
腫脹 6-7 0-1
腋窩腫脹 調査せず
発熱 1-16 0-1
倦怠感 34-59 17-33
頭痛 25-52 14-34
悪寒 6-35 3-6
嘔吐 0-2 0-1
下痢 8-11 6-12
筋肉痛 14-37 5-11
関節痛 9-22 4-6
解熱剤使用 20-45 10-14

各接種7日後以内のワクチン反応性症状

実薬群% プラセボ群%
接種部疼痛 83.4-88.2 17.0-17.5
発赤 2.8-8.6 0.4
腫脹 6.1-12.2 0.3
腋窩腫脹 10.2-14.2 3.9-4.8
発熱 0.8-15.5 0.3
倦怠感 37.2-65.3 23.4-27.3
頭痛 32.7-58.6 23.4-26.6
悪寒 8.3-44.2 5.6-5.8
嘔気嘔吐 8.3-19.0 6.4-7.1
下痢 調査せず
筋肉痛 22.7-58.0 12.4-13.7
関節痛 16.6-42.8 10.8-11.8
解熱剤使用 調査せず

治験進行中のいかなる症状も自発的に報告

実薬群 プラセボ群
重篤有害事象 79人・84件 89人・91件
死亡 1人 3人
  • 重篤有害事象の内訳は実薬群とプラセボ群のいずれにも明らかな偏りはない
  • 実薬群2回目接種の14日後に発生した横断性脊髄炎1件は,独立委員会が特発性idiopathicと判断したため,治験担当者はワクチンとの関連している可能性があると判断
  • 死亡計4人の死因は,交通事故,鈍的傷害,殺人,真菌性肺炎
その他の有害事象

2回目1ヶ月以内の有害事象・6ヶ月以内の重篤有害事象

実薬群
人 (%)
プラセボ群
人 (%)
重篤serious有害事象 126 (0.6) 111 (0.5)
└うち重症severe 71 (0.3) 68 (0.3)
└うち致命的 21 (0.1) 23 (0.1)
└うち関連あり 4 (0.0) 0
脱落に至った有害事象 37 (0.2) 30 (0.1)
└うち重症severe 13 (0.1) 9 (0.0)
└うち致命的 3 (0.0) 6 (0.0)
└うち関連あり 16 (0.1) 9 (0.0)
死亡 2 (0.0) 4 (0.0)
  • 論文では2回目接種後約14週までの有害事象を観察
  • 実薬群死亡の死因は,動脈硬化(※詳細不明),心停止
  • プラセボ群死亡の死因は,死因不詳×2,脳出血,心筋梗塞

2回目28日以内の有害事象

実薬群
人 (%)
プラセボ群
人 (%)
関連を問わない有害事象 3632 (23.9) 3277 (21.6)
└うち受診あり 1372 (9.0) 1465 (9.7)
└うち重症severe 234 (1.5) 202 (1.3)
└うち重篤serious 93 (0.6) 89 (0.6)
└うち死亡 3 (<0.1) 2 (<0.1)
└うち脱落 50 (0.3) 80 (0.5)
関連ある有害事象 1242 (8.2) 686 (4.5)
└うち受診あり 140 (0.9) 83 (0.5)
└うち重症severe 71 (0.5) 28 (0.2)
└うち重篤serious 6 (<0.1) 4 (<0.1)
└うち死亡 0 0
└うち脱落 18 (0.1) 15 (<0.1)
  • 実薬群死亡の死因は,心肺停止,自殺
  • プラセボ群死亡の死因は,腹腔内穿孔,心肺停止,慢性リンパ性白血病参加者での重症全身性炎症症候群