差分

ナビゲーションに移動 検索に移動
一言で言えば,「効果が期待できて,重篤または接種をためらう有害事象が観察されないワクチンを,よくぞこの短期間で3種も実用化までこぎつけたものだ」と感嘆するレベルです.
 
 
===認可後に米国CDCが発表したPfizerワクチンでのアナフィラキシー反応===
ここで,治験ではなく,米国での緊急使用認可後の市中接種で初めて報告されたアナフィラキシー反応を見ておきましょう.
 
米国では2020年12月11日(金)にPfizerワクチンの緊急使用認可が出され,週明け14日から全米各地で急速に接種が始まりました.治験参加者よりも遥かに多い人数が短期間で接種を受けたため,アナフィラキシー反応の報告も相次ぎました.
 
それを受け,2020年12月14日-23日の10日間に報告されたアナフィラキシー反応について,米国CDCが2021年1月6日に以下のとおり発表しました.
 
<div style="font-size:1.1em;">
[https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/70/wr/mm7002e1.htm Allergic Reactions Including Anaphylaxis After Receipt of the First Dose of Pfizer-BioNTech COVID-19 Vaccine — United States, December 14–23, 2020. January 6, Early Release, MMWR 70]
</div>
*VAERS(※米国のワクチン接種後有害事象集計システム)に2020/12/14-/23の間に,Pfizerワクチン接種後のアナフィラキシー反応が,計21例報告された
*この間に同ワクチンは 1,893,360 本接種された(全員が1回目接種)
*アナフィラキシー反応の発生頻度は100万接種当たり11.1件である
*21例中15例は接種後15分以内に発生した;時間経過の中央値は13分,範囲は2-150分だった
*21例中17例はアレルギーの既往があった;さらにうち7例はアナフィラキシー反応の既往があった
*診療録が確認できた20例全員が快復し帰宅できた
 
同じ米国での不活化インフルエンザワクチンによるアナフィラキシー反応は,米国CDCの報告によると100万接種当たり1.41件とされています.
:[https://www.cdc.gov/flu/prevent/egg-allergies.htm Flu Vaccine and People with Egg Allergies]
したがって,見かけの数字としてはPfizerワクチンは不活化インフルエンザワクチンよりアナフィラキシー反応を起こしやすい可能性があります.
 
ただし,Pfizerワクチンは新登場のワクチンであるため,接種担当者が他のワクチンよりも注意深く観察したりより多くVAERSに報告している可能性が否定できません.
 
また,「まだ」180万件程度の実績から判断しているため,今後1,000万件や1億件接種されれば,アナフィラキシーの報告数が変動する可能性も残されています.もちろん,11.1/100万よりも大きな数字になるかもしれません.
 
アナフィラキシー反応の発生頻度については,引き続き注意深く情報収集する必要があります.
 
なお,アナフィラキシー反応はワクチンに限らずありとあらゆる薬剤投与で付きまとう副作用です.すべての医師・医療職が,常にいかなる薬剤においてもアナフィラキシーに備えているべきです.
:ちなみに私は研修医時代に,ナウゼリン座薬を処方した患者が診察室脇のトイレですぐに挿肛した途端にアナフィラキシーショックを起こされた経験があります.
 
今回の3ワクチンだけで過度にアナフィラキシーをおそれるのは控えるべきでしょう.
==3ワクチン論文からわかること,わからないこと==

案内メニュー