差分

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この流れの翌年2016年,フィリピン政府は世界で初めて Dengvaxia を「9歳以上の小児および成人」に限定して定期接種として導入しました.長期観察で9歳以上はデング入院が減少していたためです.
その後6ヶ月超の間に83万人あまりの小児が Dengvaxia 接種を受けた頃,2017年に製造元の 接種を受けた頃,2017年11月末に製造元の Sanofi Pasteur が重大な発表を行いました.
:[https://www.sanofi.com/en/media-room/press-releases/2017/2017-11-29-17-36-30 Sanofi updates information on dengue vaccine. Press releasesNovember 29 2017]
Dengvaxia のさらなる長期成績を解析したところ,
そして Sanofi Pasteur は Dengvaxia の添付文書を「接種対象者はデング感染既往がある者に限る」と改訂したのでした.
 
Sanofi Pasteur の発表を受けて,フィリピン保健省は2017年12月に Dengvaxia 接種を直ちに中止しました.
これはフィリピンで大変な問題となり,市民,特に小児の保護者のワクチン忌避を引き起こしました.
現実には,治験ではなく定期接種として接種を受けた小児の大半で過去にデング既往があったかどうかはわかりません.フィリピンでは毎年数10万人がデングに感染するため,発熱してもデングを疑った厳密なウイルス学的診断は殆ど行われず,臨床診断されるのみか受診すらしないケースばかりだからです.<br>
よって,Dengvaxia接種児が実際に重症デングに罹患したとしても,それが Dengvaxia による抗体が原因でのADEなのか,初感染であっても Dengvaxia とは関係のない(ADEではない)重症化なのか,はたまた Dengvaxia前に感染歴があって前回感染の抗体によるADEなのか,個々の症例で区別することは不可能だったのです.Dengvaxia前に感染歴があって前回感染の抗体によるADEなのか,個々の症例で区別することは困難でした.<br>
そもそも研究において統計的にのみ観察された事象について,市中での個々の症例が研究でのどちらの群に相当するのかを区別することは,原理的に不可能です.
その結果,「Dengvaxiaは危険なワクチンだ」→「すべてのワクチンが危険だ」と世論がエスカレートしてしまいました.
その煽りを最も強く食らったのが,麻疹でした.
 
Dengvaxia中止前の2017年までは,フィリピンでの麻疹含有ワクチンの接種率は80-90%と比較的高く推移していました.特に2017年は89%と良好な成績でした.<br>
ところが2018年は67%,2019年でも73%と破滅的に激減しました.
:[https://apps.who.int/immunization_monitoring/globalsummary/coverages?c=PHL WHO vaccine-preventable diseases: monitoring system. 2020 global summary - Coverage time series for Philippines (PHL) ]
::※「MCV1」参照
麻疹は感染力が強い(基本再生産数が12-18;新型コロナは2.5)ため,ワクチン接種率は95%以上を維持しなければ制御できないとされています.70%を割るような落ち込みは,麻疹大流行を間違いなく引き起こします.<br>
実際にフィリピンの麻疹発生数は,2017年2,428人→2018年20,827人→2019年48,525人と,壊滅的に増加しています.
:[https://apps.who.int/immunization_monitoring/globalsummary/incidences?c=PHL]
::※「Measles参照」

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