新型コロナワクチン対象者別検討
目次
このページの目的
Pfizer, Moderna, AstraZenecaの各コロナワクチンの治験 phase 3 結果が論文化されたことは「新型コロナワクチンまとめ(医療従事者向け)」で解説しているとおりです.
治験結果を踏まえ、米国、英国をはじめ複数の国でこれらワクチンが承認され、接種が始まっています.
製薬会社の役割は,ワクチンを開発・治験して承認申請するまでです.
ワクチンを承認するのは各国政府の役割です.
そして,承認したワクチンをどういう人に接種しどういう人には接種しないのかの指針を示す(時には規制する)のも,各国政府の役割です.
治験では,効果を明瞭に示すために,接種対象者は厳格に絞られていました.
しかし承認後は,ありとあらゆる背景を持つ実際の市民が接種対象者となります.治験では対象外だった条件の市民にも,接種するか否かを決定せねばなりません.
承認後に政府が決めた指針(規制)に照らし,個別の市民での接種の可否を判断し決定するのは,接種担当医であり,市民本人です.
治験で対象外だった条件の人に接種すべきか否か.政府の指針に照らしても接種可否を容易に判断できないことがしばしばあります.
このページは,そうした接種可否の判断材料をまとめています.
免責事項
このページはあくまでも参考情報のまとめにすぎません.
個々の接種可否の決断は,個々の当事者(接種担当医師,対象者本人,対象者本人の主治医等)の責任において行ってください.
このページの情報を参考にして行われた医療行為等の選択および結果については,サイト管理者は一切の責任を負いません.
参照先リスト
日本
種別 | サイト |
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政府機関 | 厚生労働省|新型コロナワクチンについて |
政府機関 | 内閣官房|新型コロナワクチンについて |
学会 | [ 日本産婦人科感染症学会] |
学会 | [ 日本感染症学会] |
WHO
種別 | サイト |
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国際機関 | WHO|COVID-19 vaccines |
米国
種別 | サイト |
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政府機関 | CDC - ACIP|COVID-19 ACIP Vaccine Recommendations |
英国
カナダ
種別 | サイト |
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政府機関 | Canada.ca|Vaccines for COVID-19 |
政府機関 | Recommendations on the use of COVID-19 vaccines (January 12, 2021) |
オーストラリア
種別 | サイト |
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政府機関 | 保健省|COVID-19 vaccines |
シンガポール
種別 | サイト |
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政府機関 | 保健省|COVID-19 Vaccination |
ノルウェー
種別 | サイト |
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政府機関 | 国立公衆衛生研究所|Coronavirus immunisation programme |
スウェーデン
種別 | サイト |
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政府機関 | 緊急事態省|Official information on the Covid-19 pandemic / Vaccine |
イスラエル
種別 | サイト |
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政府機関 | 保健省|COVID-19 Vaccine |
高齢者
3ワクチンとも治験参加者に高齢者が含まれています.ただし,年齢階層ごとの割合は治験論文にはあまり明確に書かれていません.
「新型コロナワクチンまとめ」で示したとおり,Pfizerワクチンで55歳以上が42.3%,Modernaで65歳以上が24.8%,AstraZenecaで70歳以上が3.8%と,集計の仕方もバラバラです.
どの治験でもSupplement/Appendixで年齢階層別のサブグループ解析をしており,高齢者でも差は検出されています.
有害事象についても,疼痛や発熱等の反応性症状は高齢者の方が低頻度でした.高齢者に限定的かつ因果関係が疑われる有害事象も報告されていません.
ざっくりした話としては,3ワクチンは高齢者でもCOVID発症予防効果があり,接種をためらうような有害事象も増えない,と期待できるでしょう.
また,高齢であるほどCOVIDによる重症化や死亡のリスクが階段状に跳ね上がることは周知のとおりです.
以上により,3ワクチンの高齢者への接種をためらう理由は今のところ乏しいと言えるでしょう.
ただし,日本で対象者が多数に及ぶと思われる70代,80代,90代のような各高齢者層での真の効果と安全性については,治験結果だけから確実に判断することは困難です.
また一般論として,ワクチンの効果は高齢になるほど低下することが他の複数のワクチンで示唆されています.
「ひょっとしたら若年者よりは効果が落ちるかもしれないが,COVIDによる重症化・死亡リスクを考えれば,接種をためらう理由は乏しい」と整理します.
高齢者:日本での指針
厚生労働省は新型コロナワクチン接種についてのお知らせにおいて,65歳以上の高齢者を医療従事者等に次ぐ第2優先順位の接種対象者としています.
「自治体向け通知・事務連絡等」に掲出されている事務連絡等においても,高齢者入所施設等での接種の準備等に言及しています.
高齢者:各国での指針
以下に各国政府等の指針をまとめます.
米国 | 高齢者を含む接種年齢上限について特に言及なし |
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英国 | 80歳以上も含めて全高齢者を高優先順位の接種対象としている |
カナダ | 85歳以上などの超高齢者での効果が不明瞭であること,一般論として高齢であるほどワクチンによる免疫獲得能が低下することには言及しつつ,接種年齢上限には言及なし |
オーストラリア | 高齢者は施設入所者>80歳以上>70歳以上の順に優先接種対象であるとしている |
シンガポール | 高齢者は優先接種対象であるとしている |
ノルウェー | 接種対象者自体を65歳以上高齢者または合併症のある成人に限定している |
スウェーデン | 高齢者を含む接種年齢上限について特に言及なし |
イスラエル | 高齢者を含む接種年齢上限について特に言及なし |
ノルウェーでの高齢者接種後死亡はワクチンとの因果関係なし
ノルウェーにおいて「施設入所中の高齢者のうち23人が,新型コロナワクチン接種後1週間以内に死亡した」と一部報道にありました.
これについてノルウェー政府は,「国立公衆衛生研究所およびノルウェー医学会による調査の結果,23人の死亡と新型コロナワクチン接種の間に因果関係を示唆するものはない」旨を,2021年1月21日付で発表しています.
死亡した23人の高齢者はいずれも重い合併症があったこと,統計学的解析により新型コロナワクチン接種が死亡を増加させるとは言えないこと,ノルウェーの高齢者入所施設では毎週300人超が亡くなること,に言及しています.
No indication of causal relationship between COVID-19 vaccination and death (Date: 21/01/2021) |
いわゆる「紛れ込み」(ワクチン接種直後に別の原因による有害事象や死亡が偶然重なること)と考えられます.
ノルウェーの事案を理由に,施設入所高齢者への新型コロナワクチン接種をためらう必要はないでしょう.
ただし,施設入所者をはじめ高齢者はもともと疾病リスク,死亡リスクが高いため,紛れ込みが生ずる可能性についても丁寧に説明する必要があります.これは新型コロナワクチンに限らずすべてのワクチンで注意すべきことです.
小児
3ワクチンとも治験参加者は16歳または18歳以上に限定されています.そのため16歳または18歳未満の小児における効果と安全性は確認されていません.
また,小児のCOVIDは無症状または極めて軽症であることが殆どです.
かつ,3ワクチンとも接種済み者から周囲への感染伝播を予防できるか否かが治験では確認されていません.
COVID発症リスクが低い小児に,小児での効果と安全性が確認されておらず周囲への感染伝播阻止効果が不明瞭なワクチンを接種すべきかについては,疑問が残ると言わざるを得ません.
小児:日本での指針
厚生労働省は「新型コロナワクチンのお知らせ」において,「子どもが接種の対象となるかどうかなどは安全性や有効性の情報などを見ながら検討されます」と言及しています.
すなわち,2021年1月31日時点では,日本では小児は接種対象には含まれていません.
なお,「医療機関向けの手引き」では16歳未満への予防接種における一般的な手順(保護者の同意取得等)について注意喚起していますが,これは現時点で小児への接種を前提としているわけではなさそうです.将来的に接種対象に含まれる可能性に備えて,保護者の同意取得等について今のうちから一般的な注意喚起をしておこうという,役所的な発想と考えられます.
小児:各国での指針
以下に各国政府等の指針をまとめます.