症例定義|その他関連する通知等

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新型コロナウイルス感染症(指定感染症)に関する通知等を下記に整理します。

指定感染症と感染症法については「指定感染症とは|感染症法の解説」を参照してください。

通知や事務連絡などの違いについては「通知,事務連絡,その他文書の違い」を参照してください。

最終更新日時

2020年2月17日 23:59

最新の通知

症例定義
健感発0204第1号
発出日 令和2年(2020年)2月4日
発簡番号 健感発0204第1号
発簡者 結核感染症課長
文書名 感染症の予防及び感染症の患者に関する医療に関する法律第12条第1項及び第14条第2項に基づく届出の基準等について(一部改正)
配布先 都道府県・保健所設置市の衛生主管部(感染症担当部署)
概要 感染症法に定められた感染症を発見した場合は、感染症法第12条等に基づいて医師等が管轄の保健所に発見を届け出る義務があります。

それぞれの感染症を、どのような条件で疑い、どのような方法で診断し届け出るかを定めた「届出基準」が別途定められています。
その届出基準に「新型コロナウイルス感染症を新たな項目として加える(=一部改正)」という主旨の通知です。

文中に「症例定義」という語はありませんが、これが厚生労働省が定めた新型コロナウイルス感染症の公式の症例定義です。
宛先は自治体の感染症担当部署ですが、臨床医にとっても極めて重要な通知です。
詳細は下記「#最新の症例定義」を参照

備考 従来から定められている「届出基準」の「一部改正」を定めた通知であるため、「新旧対照」という形で書いてあります。

行政文書の習慣として、新規追加又は改正された箇所にはアンダーラインを引いてあります
これまでは存在しなかった「指定感染症」の項目として新型コロナウイルス感染症が新規追加されたため、すべての文章にアンダーラインを引いてあります……よって大変読みづらい

※アンダーラインが引かれていないバージョンは、改正済みの届出基準(PDF)にあります。ただし、エボラ出血熱から始まりすべての感染症が書かれてあるので、ボリュームが大きいです。

また、これまでは存在しなかった「指定感染症」の項目番号として「第7」が割り当てられ、これまで「第7」に割り当てられていた疑似症届出基準には「第8」の番号が割り当てられました。
本通知の末尾のページは、疑似症届出基準の項目番号「第7」を「第8」に改正したことを新旧対照しているだけであり、疑似症届出基準の内容には全く変更がありません。わかりづらいのでご注意ください。

こういう些末なことにもエネルギーを使うのが行政文書の常です…。

この通知の前日2月3日に、全く同じ文書名で発簡番号が異なる通知「健感発0203第2号」が発出されています。
しかし、本文や症例定義については「健感発0203第2号」と「健感発0204第1号」は一字一句違わず全く同じです
実は、この2つの通知を読み比べると、診断後の届出(感染症法第12条に基づく医師の義務)に用いる「別記様式6-1」というフォーマットについて、「健感発0203第2号」に付随したバージョンで一部誤りがあったのです。
その誤りを修正するために翌日発出されたのが「健感発0204第1号」です。よって、症例定義の内容そのものを参照する際には、「健感発0204第1号」でも「健感発0203第2号」でもどちらでも構わないということになります。
ただし、行政の習慣として、後に発出したものだけを有効とし、先に発出したものは「廃止」するのが通例です。廃止扱いになっていないのは、担当の結核感染症課が新型コロナ対応であまりに多忙すぎて、そこまで細かい作業ができていないのであろうと想像されます。
ちなみに、「別記様式6-1」の誤りとは、「余分な右かっこが1文字挿入されていた」だけでした…。そんなあまりに些細なことであっても、「通知の再発出」という大袈裟?な方法をとらざるを得ないのが行政なのだとご理解ください…。

検査の柔軟な実施の要請
健感発0207第1号
発出日 令和2年(2020年)2月7日
発簡番号 健感発0207第1号
発簡者 結核感染症課長
文書名 「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第12条第1項及び第14条第2項に基づく届出の基準等について(一部改正)」に関する留意事項について
配布先 都道府県・保健所設置市の衛生主管部(感染症担当部署)
概要 2月3日に症例定義が発出され(「健感発0203第2号」→翌日微修正「健感発0204第1号」)、自治体が地方衛生研究所で検査を実施できるようになりました。

症例定義は厳密に定められていますが、当初から「ただし、必ずしも次の要件に限定されるものではない」との但し書きがあり、症例定義に必ずしも合致しなくても自治体の判断で検査を実施することが求められています
この通知「健感発0207第1号」は、その但し書きを改めて強調し、検査が必要だと担当医が判断するケースに対して柔軟に検査を行うよう自治体向けに再度要請することが目的です。

備考 感染症法においては、措置のほとんどが自治体の権限と定められています。そのため、措置の是非については、自治体が各所の事情に応じて自らの裁量で決定します。

そのぶん、自治体ごとに若干のばらつきが生じることがありますが、ばらつきが目立つ等の場合にはこのように通知を発出し、ばらつきの調整を図ることがあります。

最新の事務連絡

流行地域の変更(浙江省の追加)
2月12日付け
発出日 令和2年(2020年)2月12日
発簡者 結核感染症課
文書名 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第12条第1項及び第14条第2項に基づく届出の基準等における新型コロナウイルス感染症に関する流行地域について
配布先 都道府県・保健所設置市の衛生主管部(感染症担当部署)
概要 最初に発出された症例定義「健感発0204第1号」では、滞在地等の要件で重要な「WHOの公表内容から 新型コロナウイルス感染症の流行が確認されている地域」を「湖北省」だけに限定していました。

その後の中国での感染拡大を受け、2月12日付けで「浙江省」も加えることを発出したのがこの事務連絡です。
したがって、2月12日以降の症例定義では「湖北省または浙江省」が滞在地等の要件となります。 これは重要な変更ですので、注意してください

備考
検査対象者の拡大;実質的な症例定義の拡大
2月16日付け
発出日 令和2年(2020年)2月16日
発簡者 結核感染症課
文書名 新型コロナウイルス感染症に関する行政検査について(依頼)
配布先 都道府県・保健所設置市の衛生主管部(感染症担当部署)
概要 上述の2通の通知「健感発0204第1号」で症例定義が示され,続く「健感発0207第1号」では症例定義の柔軟な運用が求められました.

この事務連絡は,さらに検査対象者を拡大することを明記しています.これは実質的な症例定義の拡大です.

詳細は下記に整理しましたので参照ください.

備考

最新の症例定義

2月4日付け通知(健感発0204第1号)および2月12日付け事務連絡に基づく症例定義に加え,
2月16日付け事務連絡で下記のとおり症例定義が実質的に拡大されました

臨床的特徴

まず最初に、臨床的な特徴が述べられています。

感染源 感染源動物等は不明(2020年2月2日時点)
ヒト-ヒト感染 あり
潜伏期間 2-10日間
症状 初期 感冒様症状
  • 発熱+咳+全身倦怠感
中後期 発症後5-14日後に一部が肺炎に至る
  • 呼吸困難等が出現
  • 画像上の肺炎像
重症化リスク 高齢者、合併症がある場合

感染が疑われる患者=検査対象患者

「感染が疑われる患者」、すなわち検査の対象となる患者は、次のように定義されています。

2月12日付けの事務連絡により、滞在地等の要件が「湖北省または浙江省」へと拡大されました

また、2月16日付けの事務連絡により、検査対象者が拡大されました。実質的な症例定義の拡大です。

  • 次のア、イ、ウ、エのいずれかに該当し、かつ、他の感染症や他の病因によることが明らかでない患者患者
  • ただし、必ずしも次の要件に限定されるものではない
症状 接触時期 接触内容 備考
発熱または呼吸器症状
  • 軽症でもよい
  • 体温の値を問わない
接触時期を問わず 確定患者との濃厚接触
  • 確定患者との濃厚接触であれば、軽微な呼吸器症状や微熱のみでも検査対象となります
  • 接触の時期も問われません
発熱≧37.5℃ 呼吸器症状 発症前14日以内に 湖北省または浙江省に滞在
  • 一定の症状があれば、湖北省または浙江省に滞在歴があるだけで検査対象となります
  • 湖北省または浙江省で患者と接触したか否かは問われません
発熱≧37.5℃ 呼吸器症状 発症前14日以内に 湖北省または浙江省に
滞在歴がある人との濃厚接触
  • 一定の症状があれば、湖北省または浙江省に滞在歴がある人との濃厚接触があるだけで検査対象となります
  • 湖北省または浙江省に滞在歴がある人に症状があるか否かは問われません
感染症様の症状 集中治療等が必要 直ちに原因を診断できず、新型コロナの鑑別を要する
  • ICU入室等の重篤かつ原因不明の感染症症状で、新型コロナとの鑑別が必要だと医師が判断すれば、検査対象となります
  • 接触歴や滞在歴は問われません
「濃厚接触歴」とは
  • 接触相手との同居、長時間の接触(車内、航空機内等での接触も含む)
  • 適切な感染予防策を施さずに行った医療行為や介護行為
  • 接触相手の気道分泌液や体液等の汚染物質に直接触れた可能性が高い行為
2月16日 対象拡大 発熱≧37.5℃ 呼吸器症状 肺炎(入院を要するもの)の疑い
高齢者or基礎疾患保有者はとりわけ考慮
  • かなり思い切った検査対象拡大であり、「医師の判断」で検査ができるようになりました
  • ただし、この2条件の場合は、インフルエンザ迅速その他呼吸器関連病原体の一般的な検査が優先されます
    • それでも、細菌培養等、日数を要する検査であればその結果を待たずして新型コロナウイルス検査を提出可能です
医師が総合的に判断した結果、新型コロナウイルス感染症を疑う
他の呼吸器関連病原体が陽性だが、治療不応性で悪化し、
医師が総合的に判断した結果、新型コロナウイルス感染症を疑う
  • 他の呼吸器関連病原体が陽性であっても、治療不応性で悪化する場合には、重複感染を前提として新型コロナウイルス検査を提出可能となりました

感染が疑われる患者=検査対象患者のフローチャート

drawio: case_definition_flowchart

検査

上記の臨床的特徴があり、かつ、上表の条件(症例定義)を満たす疑い患者に対して、次の方法で検査を行います。

検体 検査法
  • 喀痰
  • 気道吸引液
  • 肺胞洗浄液
  • 咽頭ぬぐい液
  • 鼻腔吸引液
  • 鼻腔拭い液
  • 剖検材料
  • PCR法によるウイルスゲノムの検出
  • ウイルス分離・同定

検体採取は疑った医師が医療機関で行い、採取した検体を自治体(保健所)が回収し、感染症法第15条第4項に基づいて都道府県知事(保健所設置市長)の義務として検査が実施されます。実際には、自治体が所管する地方衛生研究所(地衛研)等の検査機関で行われます。

ウイルス分離は数日以上の時間と手間を要する検査なので、実際にはPCR法(リアルタイムRT-PCR法、rRT-PCR法)によるウイルスゲノム検出が優先されます。rRT-PCR法であれば通常は半日~1日で結果が得られます。rRT-PCR法が陽性で診断確定となった場合に、地衛研等の判断で事後的にウイルス分離を試みる可能性もあります。

診断確定と届出

上記検査の結果は、地衛研又は自治体感染症担当部署から担当医に報告されます。

結果が陽性であれば診断確定となり、担当医には感染症法第12条に基づく届出の義務が生じます。

届出は、上記通知とともに発出された新型コロナウイルス感染症専用の届出様式に記入し、届出する医師が署名又は記名捺印を行い、管轄の保健所に提出します。

管轄の保健所はこちらのリンクから参照できます