「新型インフルエンザ等対策特別措置法とは」の版間の差分
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これらからわかるとおり,感染症法の主体が都道府県・保健所設置市であるのに対し,新型特措法の主体は国を根幹としてさまざまなステークホルダーにわたっています. | これらからわかるとおり,感染症法の主体が都道府県・保健所設置市であるのに対し,新型特措法の主体は国を根幹としてさまざまなステークホルダーにわたっています. | ||
| − | == | + | ==新型インフルエンザ等対策と行動計画== |
| + | 「'''新型インフルエンザ等対策'''」とは,新型インフルエンザ等が発生したときに「'''政府対策本部'''」が'''設置されてから廃止されるまでの間'''に行われる一連の措置を総称したものです. | ||
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| + | ただし,それら措置を新型インフルエンザ等が発生してから慌てて考えるようでは間に合うはずがありません. | ||
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| + | そのため,事前に「行動計画」として策定することになっています. | ||
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| + | 行動計画は政府,都道府県,市町村,公共機関の各レイヤーがそれぞれ策定します. | ||
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| + | {|class="wikitable" | ||
| + | !担当!!名称!!根拠条文!!内容 | ||
| + | |- | ||
| + | !政府!!政府行動計画 | ||
| + | |第6条 | ||
| + | | | ||
| + | *新型インフルエンザ等の外国での発生状況の情報収集 | ||
| + | *各団体や国民への情報提供 | ||
| + | *初動 | ||
| + | *検疫,新型インフルエンザ等のワクチン接種,蔓延防止等の措置 | ||
| + | *医療提供体制の確保の総合調整 | ||
| + | *生活物資の価格安定,その他国民生活・国民経済の安定の措置 | ||
| + | *etc. | ||
| + | |- | ||
| + | !都道府県!!都道府県行動計画 | ||
| + | |第7条 | ||
| + | | | ||
| + | *政府行動計画に基づいて策定 | ||
| + | *新型インフルエンザ等の都道府県内での発生状況の情報収集・調査 | ||
| + | *市町村や住民への情報提供 | ||
| + | *医療従事者の確保,医療提供体制の確保 | ||
| + | *住民生活・地域経済の安定の措置 | ||
| + | *etc. | ||
| + | |- | ||
| + | !市町村!!市町村行動計画 | ||
| + | |第8条 | ||
| + | | | ||
| + | *都道府県行動計画に基づいて策定 | ||
| + | *住民への情報提供 | ||
| + | *新型インフルエンザ等のワクチン接種 | ||
| + | *住民生活・地域経済の安定の措置 | ||
| + | !指定(地方)公共機関!!業務計画 | ||
| + | |第9条 | ||
| + | | | ||
| + | *政府行動計画及び都道府県行動計画に基づいて策定 | ||
| + | *新型インフルエンザ等対策を実施 | ||
| + | *etc. | ||
| + | |- | ||
| + | !指定行政機関!! | ||
| + | |第10条 | ||
| + | | | ||
| + | *政府/都道府県/市町村行動計画又は公共機関の業務計画のために必要な医薬品・物資等を備蓄・点検 | ||
| + | |} | ||
==厚生労働大臣(厚生労働省)の役割== | ==厚生労働大臣(厚生労働省)の役割== | ||
2020年3月14日 (土) 19:47時点における版
目次
最終更新
新型インフルエンザ等対策特別措置法とは 最終更新 2020年3月14日 18:00
新型インフルエンザ等対策特別措置法(新型特措法)の成立経緯
2009(平成21)年に新型インフルエンザA(H1N1)が世界を襲ったとき,日本には新型インフルエンザをはじめとする新興感染症に対峙するための法令は,「感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)」があるのみでした.
感染症法では第6条第7項において新型インフルエンザ等感染症を定義し,第15条に基づく積極的疫学調査や行政検査,第19条に基づく入院(強制)等の蔓延防止のための様々な法的措置を規定しています.これら措置の権限は都道府県知事及び保健所設置市長にあり,知事/設置市長が権限を行使することで新型インフルエンザの蔓延防止を図ることを目指します.
| 指定感染症とは|感染症法の解説も参照 |
しかし,感染症法の規定が及ぶ範囲は,患者や疑い患者,接触者の他には,患者が使用した建物や発生地域の交通制限等のみです.エボラ出血熱等の,重大だが発生患者がごく少数に留まる感染症の蔓延防止は,感染症法の範囲内でも対応可能と言えるでしょう.
しかし新型インフルエンザのように,重大かつ多数(最大で数千万人)の患者が発生する新興感染症の蔓延防止は,感染症法の運用だけでは対応困難です.
多数の患者が発生する新興感染症の蔓延防止には,集会の制限,医療用資材等の流通の制限,経済安定化の施策,新興病原体に対する予防接種等の,日本全体をカバーする措置が必要なこともあります.感染症法にはそうした規定がないため,法的根拠をもって措置を行うことができないのです.
実際に2009(平成21)年の新型インフルエンザ発生時には,そうした広範囲の措置を法的根拠が乏しいまま実施したり国民や企業等に「要請」することとなり,種々の混乱を招きました.
それらの反省は,厚生労働省が2010(平成22)年3月に招集した「新型インフルエンザ(A/H1N1)対策総括会議」によって討論・総括されました.
同会議は7回にわたって会合を行い,最終結論は同年6月に「報告書」として公開されました.(会議メンバーリストはこちら).
報告書が指摘及び提言した項目は多岐に渡りますが,最も重要な点として,「発生前から周到に準備し,人員と予算を充当し,必要な法整備を図ること」が明記されました.
これが契機となり,報告書の2年後の2012(平成24)年に当時の民主党政権下で成立したのが「新型インフルエンザ等対策特別措置法」(以下,新型特措法)です.
重大かつ多数の患者が発生する新型インフルエンザに対し,蔓延防止のための広範な措置を法的根拠をもって行うために制定されたのが, |
新型特措法が対象とする感染症
新型特措法が対象とする疾患は,実は新型インフルエンザだけではありません.
感染症法第9条に基づく新感染症も新型特措法の対象疾患です.
新型特措法第2条第1号に明記されています.
| (定義)
第2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。 1 新型インフルエンザ等 感染症法第6条第7項に規定する新型インフルエンザ等感染症及び同条第9項に規定する新感染症(全国的かつ急速なまん延のおそれのあるものに限る。)をいう。 |
まず,感染症法第6条第7項に規定される「新型インフルエンザ等感染症」とは,下記の2種類を指します.
| 新型インフルエンザ | 新たにヒト-ヒト感染の能力を獲得しパンデミックを生じた,新興型のA型インフルエンザウイルス |
|---|---|
| 再興型インフルエンザ | 過去にパンデミックが終息して長期間経過したものが再度のパンデミックを生じた,再興型のA型インフルエンザウイルス |
法令用語及び行政用語では,上記2種類を総称する際に「新型インフルエンザ『等』感染症」と呼びます.
次に,感染症法第9条に規定される「新感染症」とは,下記を指します.
| 新感染症 | ヒト-ヒト感染する,重大かつ未知の新興感染症 |
|---|
新感染症は病原体が未特定でも指定することが可能です.実際に2003年に発生したSARSは,病原体未特定だった同年4月の段階で新感染症に指定されています.後に病原体が新興コロナウイルス(SARS-CoV)であると特定され,特定後の6月に指定感染症へと指定し直されました.
これら「新型インフルエンザ等感染症」と「新感染症」が,新型特措法の対象疾患です.
ただし,非常に紛らわしいのですが,新型特措法においては「新型インフルエンザ『等』感染症」と「新感染症」を総称して「新型インフルエンザ『等』」と呼ぶのです.
すなわち,法令用語・行政用語としては,
- 「新型インフルエンザ等感染症」と呼ぶ場合は,感染症法第6条第7項に基づく「新型インフルエンザ+再興型インフルエンザ」の総称
- 「新型インフルエンザ等」とのみ呼ぶ(「感染症」を続けない)場合は,新型特措法第2条第1号に基づく「新型インフルエンザ+再興型インフルエンザ+新感染症」の総称
なのです.
大変紛らわしいので十分にご注意ください.
| 名称 | 根拠条文 | 総称 |
|---|---|---|
| 新型インフルエンザ等感染症 | 感染症法 第6条第7項 |
新興型インフルエンザ +再興型インフルエンザ |
| 新型インフルエンザ等 | 新型特措法 第9条第1号 |
新型インフルエンザ等感染症 すなわち, 新型インフルエンザ |
新型特措法の対象疾患は,
|
新型特措法の特徴,感染症法との違い
新型特措法の目的を見てみましょう.どんな法律も第1条で「目的」を述べています.
| (目的)
第1条 この法律は、国民の大部分が現在その免疫を獲得していないこと等から、新型インフルエンザ等が全国的かつ急速にまん延し、かつ、これにかかった場合の病状の程度が重篤となるおそれがあり、また、国民生活及び国民経済に重大な影響を及ぼすおそれがあることに鑑み、新型インフルエンザ等対策の実施に関する計画、新型インフルエンザ等の発生時における措置、新型インフルエンザ等緊急事態措置その他新型インフルエンザ等に関する事項について特別の措置を定めることにより、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成十年法律第百十四号。以下「感染症法」という。)その他新型インフルエンザ等の発生の予防及びまん延の防止に関する法律と相まって、新型インフルエンザ等に対する対策の強化を図り、もって新型インフルエンザ等の発生時において国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済に及ぼす影響が最小となるようにすることを目的とする。 |
長い条文ですが,整理するとこうなります.
- 新型インフルエンザ等(=新型flu+再興型flu+新感染症)が発生すると,患者個人だけでなく,国民生活や国民経済全体にも重大な影響を及ぼすため,
- 発生前には「新型インフルエンザ等対策」の「実施に関する計画等」を立て,
- 発生時には「発生時における措置」「緊急事態措置」「その他特別の措置」を定め,
- 新型特措法と感染症法やその他の関連法律を相互補完して新型インフルエンザ等対策を強化し,
- 国民生活や国民経済に及ぼす影響を最小とすることが,新型特措法の目的
すなわち,
- 感染症法は患者個人やその周辺にフォーカスした法律
であるのに対し,
- 新型特措法は国民生活や国民経済の全体にフォーカスした法律
であると言えます.
ここで第1条に,
- 発生前の,
- 「新型インフルエンザ等対策」
- 「実施に関する計画等」
- 発生時の,
- 「発生時における措置」
- 「緊急事態措置」
- 「その他特別の措置」
の計5つの文言が出てきます.
これらはすべて新型特措法内に明記されており,これらの対策,計画,措置はすべて法的根拠を持って実施できるわけです.
また,感染症法の条文の大半は主語が「都道府県知事は」となっています.
すなわち,感染症法に規定された措置の実施権限の大半は都道府県知事(及び保健所設置市長)にあることを意味します.
感染症法の主役は実は都道府県知事・保健所設置市長なのです.
これに対し,新型特措法の条文は「国は」「政府は」「都道府県知事は」「市町村長は」「指定公共機関は」など主語が多彩です. すなわち,新型特措法に規定された内容はさまざまなレイヤーの権限又は義務として実施され,まさに国全体に施策が及ぶように作られているのです.
新型特措法は,新型インフルエンザ等が国民生活や国民経済に及ぼす影響を最小限にするための法律 |
新型特措法における特別な用語
新型特措法第2条により,下記の用語に特別な意味が定められています.
| 新型インフルエンザ等 | 新型インフルエンザ等感染症+新感染症(※前述) |
|---|---|
| 新型インフルエンザ等対策 | 政府対策本部の設置から廃止までの間に実施される,国民生活及び国民経済への影響を最小にするための一連の措置のこと |
| 新型インフルエンザ等緊急事態措置 | 緊急事態宣言から解除宣言までの間に実施される,新型インフルエンザ等対策よりも踏み込んだ一連の強い措置のこと |
| 指定行政機関 | 中央省庁その他政府機関のこと |
| 指定公共機関 | 公共性公益性が高い事業者,企業等で,新型特措法において権限や義務を負う団体のこと
|
| 指定地方公共機関 | 上記指定公共機関と同様の事業を,都道府県の管轄内で行っている団体のこと |
国,自治体(地方公共団体),事業者,国民の責務
新型特措法は第3条及び第4条で,国,自治体(地方公共団体),事業者,国民のそれぞれの責務を下記のように定めています.
| 主体 | 責務 |
|---|---|
| 国 |
|
| 自治体(地方公共団体) |
|
| 指定公共機関 指定地方公共機関 |
|
| 事業者 (※上記以外の企業・団体等の総称) |
|
| 国民 |
|
これらからわかるとおり,感染症法の主体が都道府県・保健所設置市であるのに対し,新型特措法の主体は国を根幹としてさまざまなステークホルダーにわたっています.
新型インフルエンザ等対策と行動計画
「新型インフルエンザ等対策」とは,新型インフルエンザ等が発生したときに「政府対策本部」が設置されてから廃止されるまでの間に行われる一連の措置を総称したものです.
ただし,それら措置を新型インフルエンザ等が発生してから慌てて考えるようでは間に合うはずがありません.
そのため,事前に「行動計画」として策定することになっています.
行動計画は政府,都道府県,市町村,公共機関の各レイヤーがそれぞれ策定します.
| 担当 | 名称 | 根拠条文 | 内容 | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 政府 | 政府行動計画 | 第6条 |
| ||||
| 都道府県 | 都道府県行動計画 | 第7条 |
| ||||
| 市町村 | 市町村行動計画 | 第8条 |
|
指定(地方)公共機関 | 業務計画 | 第9条 |
|
| 指定行政機関 | 第10条 |
|